今回のコラムでは、後継者のために事業承継の基本的な考え方をお伝えします。
一般的に言われている事業承継とは視点が少し違いますが、とても大事な視点なので、参考にしてください。
多くの専門家や経営者の事業承継の考え方が間違っているため、事業承継がうまくいかないケースがとても多いと実感しています。
例えば、大きな視点の違いとして、
×「事業承継は経営者が主導するべき」ではなく、〇「後継者が主導するべき」と考えます。
また、×「事業承継は相続と同じようなもの」ではなく、 〇「事業承継と相続は違うもの」と考えます。
以下、事業承継の視点を整理しましたので、ご確認ください。
事業承継は、なんのためにするのか?
まず、大事な視点として、「なんのために事業承継をするのか?」。
実は、多くの経営者や専門家がこの最も大事な視点を抜かして事業承継を進めてしまっています。後継者は、自分自身がなんのために事業承継をするのか自問自答をしてみてください。
以下は、一般的な事業承継の理由を列挙しました。
●事業を存続させるため
あたり前ですが、事業承継のわかりやすい目的は、事業を継いで(継がせて)事業を存続させることです。
●経営者が老いるため
経営者は、人なので必ず老います。病気にもなります。年齢が60歳を超えるとそのリスクはどんどん高くなります。
そうすると、意思決定が難しくなり、会社経営がうまく進まなくなってしまうので、その前に後継者が事業を継いで経営するようになる必要があります。
●後継者が経営者となってかじ取りをするため
事業承継をしてリーダーとして経営を舵取りしていくのは”後継者”です。後継者が経営をしてかじ取りをするために事業承継をします。
●先代が積み上げた「価値」を後継者受け取り、新たな「価値」を生み出すため
先代社長、先々代社長が積み上げてきた”価値”を後継者受け継いで、あらたな価値を後継者が生み出していくために事業承継を行います。
事業承継は、だれがする?
次に、事業承継の主役はだれか?という点です。当たり前のようですが、一般的に言われているのは当たり前ではないというのが現実です。
●後継者が主役となる
事業承継は、相続とは違い、その主役は後継者です。
事業承継のあと、会社が衰退せずに継続的に発展しているかどうかは、後継者の手にかかっています。
また、事業承継が成功したかどうかは、後継者が経営者になってから5年~10年して事業が継続しているかを見て初めて、事業承継が成功したかがわかるのです。
●経営者は支える側
では,先代経営者は、何をするべきか?
先代経営者は、後継者が事業承継しやすいように道筋を描いたり、サポートする役割となります。
経営者がすべてお膳立てをしてしまうと、後継者は事業を受け身で承継することになり、その後、後継者が主体的に経営するに至るまでに苦労することになっていまいます。
そして、最悪の場合、その間に会社が衰退してしまうかもしれません。
事業承継は、いつから?
事業承継はいつから始めるのか?という点です。事業承継はしっかりと準備をしないと、大変なことになります。準備も含めて事業承継と考え、いつから始めるとよいでしょうか。
●事業承継を意識した時
スタートは、経営者が事業承継を意識したとき、もしくは後継者が事業承継を意識したときから始まります。
経営者は、50歳を越えたら事業承継を意識し始めたほうがよいと思います。後継者は、息子であれば、会社に入ったら意識して行動しなければならないですし、第三者である場合は、経営者から後継者を打診された時かと思います。
いずれにしても、意識してそのまま受け身で事業承継を待つのではなく、意識したらそこから前に動き出すことが大事なことです。
●事業承継(代表交代)の5年前
我々は、事業承継までに5年の準備が必要だと考えています。
後継者自身が会社の現状把握をし、経営者となるための力を身につけ、株式の承継や取引先の承継などを進めていく必要があり、
準備も含めて5年くらいの期間を見ていた方がよいと考えています。
事業承継は、いつまで?
では、事業承継の終わりはいつか?という点です。
●本物の経営者になるまで
事業承継が終わったというのは、一般的には、代表交代されたときですが、われわれは後継者が経営者となって結果を出して、自他ともに経営者であると認められる存在になるまでが、事業承継であると考えています。
先代の手を借りずに経営できなければ、経営者であるとは言えないからです。
関係者は、だれか?
事業承継に係る関係者はだれか?後継者は、これだけの関係者が複雑に絡み合う事業承継と向き合う必要があると認識していただくとよいと思います。
後継者
後継者自身は、事業承継の最重要キーマンです。
経営者
後継者に事業承継の道筋をつくり、後継者が事業承継することを最も支援する存在です。
従業員
従業員は、後継者を経営者として認めるまで時間がかかり、最悪いつまでも経営者として認められなかったりします。
後継者は従業員との関係をやり直して、従業員が後継者へ期待し、ともに進んでいこうという気持ちになってもらうことが必要です。
親族
親族は、相続も絡んで揉めるリスクをはらんでいます。親族間でもめてしまうと経営に手がつかないほど混乱してしまう可能性があるため注意が必要です。
取引先
取引先は、後継者へ期待するとともに、不安にも感じていますので、取引先が安心できるような経営力を身につけて、安定経営をすることが大切です。
金融機関
金融機関も、後継者へ期待するとともに、不安にも感じていますので、金融機関が安心できるような経営力を身につけて、安定経営をすることが大切です。
以上、後継者の学校が伝える事業承継の基本的な考え方でした。
このコラムは、後継者のためだけに意味のある発信をしようと書いています。
後継者がひとつでも気づきを得て、一歩づつ成長していただくことを願っています。
後継者の学校 代表 大川原